グリーンドワーフシクリッド:飼育・繁殖について(まとめ)

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グリーンドワーフシクリッドの飼育と繁殖について
How to breed Biotoecus opercularis

May 16, 2021

グリーンドワーフシクリッドの飼育と繁殖について、今までの経験で得たことをまとめます。

(詳しく書いていくと とてつもなく長くなりそうなので、ここでは要点のみ)

この魚の飼育・繁殖についてのまとめ記事などは今のところ見当たらないので、この記事が先駆けとなって 議論のネタとなり、さらなる情報共有が生まれればと思います。

さて、

  1. 親魚を健康に育てる
  2. 繁殖に適した環境にする
  3. 産卵 → 孵化
  4. 子供(F1)を健康に育てる
  5. F1がF2を産む

厳密に言えば、上記の (5) まで成功して繁殖に成功したと言えるのかもしれませんが、(5) まではまだまだ時間が掛かりそうなので (1)~(4) について書いていきます。

長めの記事になりますので、以下の目次からページ内ジャンプできるようにしています。


目次


 

飼育・繁殖に適した環境

まず、この魚は

水質(特に硬度)に非常に敏感

というところが最大の飼育ポイントです。

箇条書きで書くと、

  • 総硬度(GH) 2.0゚dH を安定して維持(→水換え用の水も2.0゚dH)
  • pH 5.0~6.0 を安定して維持
  • 水温 25.0~26.0℃ を安定して維持
  • アンモニアと亜硝酸はゼロに
  • 硝酸イオン濃度が低い状態(10mg/L以下、できれば0mg/L) を安定して維持
  • 水流はごく弱く、ただし止水域ができないように
  • 飼育密度は 60cm規格水槽の場合は 2ペア(4匹)まで
  • エサは消化のよいもの(小麦粉を含まないもの)を 1日に1~2回
  • 痩せすぎも太りすぎもダメ
  • 隠れる場所(流木や水草)を多めに
  • 照明は弱く
  • 底床は細かい砂を薄敷きで

上記のようになりますが、これらの中でポイントになる部分を順に説明していきます。

総硬度

総硬度は、1.5~2.5゚dH の範囲であれば長期飼育は可能です。

1.0゚dH以下 または 3.0゚dH以上 の環境では、動きが鈍くなりエサ食いもやや落ち、長期の飼育は難しくなります。

なお、現地の水質が GH=0, TDS=0 などの情報がありますが、

試験薬や測定装置ではその値になっている(=計る/測ることができない)というだけであり、魚という生物である以上、ミネラルが完全にゼロで生きられるというのはありえない

ので、RO水(GH=0, TDS=0)だけでの飼育はできません。
(適量のミネラル分(=浸透圧)が必要)

低pHと低硬度についての考察(まとめ):硬度が低過ぎるのはやっぱりダメですね」の記事に書いた通り、

ミネラル濃度が極端に低い水の中では、魚(淡水魚)は自分の骨や筋肉などの中のミネラル分を使うことで一時的には生命を維持するが、長期的には弱っていく

ということですね。

逆に、日本の水道水そのまま(GH:6前後)でも飼育できません。(経験はありませんが多分無理です)

pH

pHは 5.0~6.0 が理想です。

pHを下げるために、私は「セラ スーパーピート」または「エーハイムトーフ ペレット」を使用していますが、使用量については 元の水の pH, KH などに依存しますので、何度か試行してみて適正量を把握します。

硝酸イオン濃度

グリーンドワーフシクリッドは硝酸イオン(NO3)による害に敏感な魚ですので、10mg/L以下、可能であれば 0mg/L となるような管理が必要になってきます。

総硬度 2.0゚dH の水で水換えすることはもちろんですが、私は脱窒作用を働かせて 硝酸イオン濃度を10mg/L前後に抑えています。

脱窒作用については、「シーケム マトリックス」というろ材を外部フィルターに入れて実現しています。

詳細は、

脱窒作用:硝酸イオン濃度を下げる方法

脱窒作用:硝酸イオン濃度を下げる方法(その2):マトリックスの適切な量

脱窒作用:硝酸イオン濃度を下げる方法:現状報告(その1)

脱窒作用:硝酸イオン濃度を下げる方法:現状報告(その2) みりん不要条件

の記事をご参照ください。

照明

照明は必須ではありませんが、魚の状態を観察するために必要な明るさがあれば問題ありません。

従って、水草を入れる場合は 必然的に ボルビティスやミクロソリウムなどに限られてきます。

底床

底床については、アピストグラマ属と同じように 砂ごとエサを吸って砂だけエラから出す という食べ方をしますので、細かくてカドが立っていないものを使用します。

薄敷きにする理由は、砂の中を止水域にしないようにするためです。

産卵床

グリーンドワーフシクリッドはケーブスポウナーです。

いわゆる「ヤシの実シェルター」や 植木鉢を割ったもので問題ありません。

水槽の目隠し

私は、グリーンドワーフシクリッド水槽に限り、水槽の手前側を除いた三面(両横と後ろ)に 薄い塩ビの板(下敷きみたいなもの)を貼って、なるべく魚を驚かさないようにしています。

この板を外したことがないので、これの あり/なし の違いは不明ですが、まあ 無いよりはいいでしょう。

 

親の性質、ペアの絆

以前の記事「グリーンドワーフシクリッド:今度はリオファリス産が産卵→孵化!! 動画 #008」で、

このペアは、産卵後もメスがオスを追い払わず一緒に卵を守っていたし、孵化後も協力しながら周囲を警戒しているので 今後に期待できそうな感じです。

と書きましたが、

やはり、産卵後や孵化後に オスが敵になるのと味方になるのとでは、メスの警戒心やストレスには随分と差が出てくると思います。

泳ぎだした稚魚を守れるか、守れないなら食べてしまうか、のポイントはここだと感じています。

また、これはグリーンドワーフシクリッドに限りませんが、ブリードものの中でも 人工孵化でブリードされた稚魚と 親に育てられた稚魚では、成魚になった後の繁殖力に違いがあるという話しも聞きます。

つまり、人工孵化でブリードされた稚魚は親の愛情を知らないので、成魚になっても産卵しない、または、産卵してもその後うまくいかない、ということらしいです。

ただ、逆に、ワイルドものの繁殖のほうが難しいという話しも聞きますので、初めて挑戦するなら「親に育てられたブリードもの」から始めるのが早いのかもしれません。

さらに、これは海外の方からコメントをいただいて知ったことなんですが、

同じロットのペアでは稚魚の生存率が下がる可能性あり

[原文]: The survival rate maybe low because if the parents are close relatives (purchased at the same time in one place).

との情報も頂いていますので、オスとメスの組合せ方にも工夫の余地がありそうです。

個人的にはアピストグラマ属の繁殖はあまり突き詰めてはいませんが、

アピストをペアで購入した後、片方を死なせてしまい、その穴を埋めるために知人から譲り受けた個体でペアリングしたときのほうが、稚魚が多く残った。

という例もいくつか聞きますね。

これも、

“close relatives” ではない

という意味で 案外 信憑性の高い話しなのかもしれません。

 

産卵したら…

ほとんどの場合、産卵は夜、人気(ひとけ)の無い時間に行われます。

ですので、朝起きて見てみたら産卵していた!!、というのが一般的ですね。

照明をいつも通り点けるのか点けないのかも、それを経験した人それぞれですが、私は点けないようにしています。

自然環境で わざわざ明るいところで産卵するか、と考えるとやはりそうではないように思いますし、実際、照明を点けたときのほうが周囲を警戒する動きが多くなるので、暗めのほうが良い結果になると思います。

産卵から孵化までは、水温にも依りますが 5~7日くらいかかります。

で、なんと、

孵化するまでは 水換えOK

です。

もちろん乱暴に水を入れたりするのはダメですが、いつもよりそーっと なら全く問題ないですね。

卵を守っている間のメスは、少々のことでは動じません。

ただ、さすがに「パッカーン」は したことはありません。

 

孵化したら…

孵化してからのメスは「超警戒モード」に入ります。

もちろん水換えなどは厳禁です。

水槽の近くでドタバタと振動を起こすのもよくないですね。

照明は一時的なら点けても問題ないです。(私が YouTubeに上げている動画 は照明を点けて撮影しています)

また、警戒している親でもエサは食べますので、いつも通りに与えます。

そして、稚魚のヨークサックがなくなる頃を見計らってブラインシュリンプ孵化の準備をします。

 

稚魚のエサ

稚魚のエサについては、

  • ブラインシュリンプ(生餌)
  • 殻無ブラインシュリンプ アルテミア
  • 超微粒の人工エサ

を与えています。

ブラインシュリンプ:ソルトレイク産とベトナム産の違い(比較)」でも書いた通り、ソルトレイク産ブラインシュリンプでは大き過ぎて食べられないので ベトナム産のものを使います。

ブライン以外にも稚魚用の人工飼料が販売されていますが、食い付きの良さではやはり生き餌には適いませんね。

できれば 1日4回(6時間ごと) 与えたいところです。

1日2回(12時間ごと)でも まあギリギリ大丈夫ですが、生存率は下がります。

 

最後に

以前は「アマゾン川の幻の宝石」などと呼ばれ、自分自身も写真でしか見たことはなく、数年前に実物(水槽で泳いでいるところ)を見たときの衝撃は忘れられません。

パッと見、ただの半透明な魚に見えますが、水質がバッチリ合ったときの青い輝きは格別のものがある非常に魅力的な魚です。

水質に敏感な部分も含め、飼育・繁殖に挑戦しがいのあるかなりメンドクサイやつではありますが、それを達成したときの喜びは文章では表現できないほどです。

最近では、年に数回(2回?)は入ってくるようになり、価格も手が届くくらいに落ち着いてきています。

ワイルドものを安易な気持ちで飼育することにはあまり賛成できませんが、本気でやってみたいという方には 是非 挑戦していただきたいと思います。

この記事がそのお役に立てれば非常に嬉しく思います。

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